立憲民主党のインタビューを受けました #11

立憲民主党インタビューの続編をお送りします。
今回の内容は、保育士の仕事と専門職性についてお話しした部分です。ご覧ください。
 
★前回のインタビュー内容はこちらをご覧ください
 
INTERVIEW#11
「まちぐるみで保育・教育の質を向上していくために」

――これまでの保育士の仕事について教えてください。
はい。都内の保育園で10年働いたあと、公設民営保育園の園長と認定こども園の副園長を計5年務めました。現場での保育士としての仕事のほかに、保育士の育成や保幼小中の連携、地域との連携を担当し、新規開園や給与制度・人材育成制度の構築にも携わりました。
 
――保育の現場の状況はいかがですか?
規制緩和の流れのため、現場は過渡期の真っ只中です。保育と教育のすり合わせや待機児童対策、保護者の多様なニーズへの対応など、現場に求められるものが急増し、保育士の仕事も年々、忙しくなる状況です。
 
――幼稚園と保育園では何か違いがありますか?
保育園は乳児から預かるため、保護者との関係も自然、長期的になります。保育時間が長く、最長6年間も育児を共にする子育てのパートナーなんです。就学後も保護者からしょっちゅう育児の悩み相談を受けました。
 
――まさしく子育て支援ですね。
家庭と保育園は、子育ての両輪なんです。保護者に寄り添い、子育ての苦楽を共にしてきた保育士だからこそ、信頼関係や対等な立場での支援ができるんです。医療や介護でも支援の関係性や非対称性が問題になりますが、子育て支援も誰にでも務まる仕事ではありません。
 
――社会的にもかなり重要な役割といえそうですが。
ええ。ここでよい関係ができれば、小学校以降の先生と保護者のコミュニケーションもスムーズになります。 いわば学校教育の下支えを担う大事な役割なんですが、実際は、学校の先生と保育士の処遇の格差がOECD加盟国のなかでも一番大きいと言われています。
 
――やはり保育士の処遇改善が課題ですね。
世間では長時間労働の問題ばかり取り沙汰されますが、日本は世界有数の長時間保育国でもあるんです。政治や経済など、社会問題の皺寄せが保育の現場を直撃します。低賃金で長時間労働の環境に人手不足が重なり、現場はかつてないほど混乱しています。処遇改善と同時に働き方改革を進め、現場の負担を軽減する必要があります。
 
――具体的にはどのような課題がありますか?
負担の一因は事務作業です。専任の事務員がいない民間の保育園の多くは、事務書類の作成や人事労務管理まで現場の保育士や園長が担っていて、施設や人手を増やすほど現場の首が締まる深刻な状況です。待機児童解消のためには、事務員を含めた配置基準の見直しや、ICTを活用した業務の効率化を同時に進める必要があります。
 
――他にも何か課題がありますか?
男性保育士の雇用促進も課題です。体力や防犯上の利点もありますが、男女共同参画に関わる問題もあります。乳幼児期の子どもたちが自然に意識できるうえ、父親の育児のモデルや父親と保育園のつなぎ役にもなれます。
 
――父親とのつなぎ役ですか?
はい。男性保育士がいると園の行事にも参加しやすく、保育体験のような教育プログラムにも、父親の参加率が増えます。父親自身が育児について学ぶ機会が増えれば、家庭での男女共同参画も進みます。
 
――無償化の問題はいかがですか?
保育・幼児教育の無償化というと家計の負担軽減が先行しがちですが、現場の保育・教育の質の向上が前提です。特に、法令改訂に伴い、主体的で質の高い保育・教育をすべての子どもたちに保障する条件整備がなければ、ただの質の切り下げになりかねません。
――どのような解決策がありますか?
保育士の専門性や専門職性の向上です。さきほどお話ししたとおり、保育士を子育てのパートナーとして保護者が子育てを学ぶ機会が増えれば、家庭や地域の子育て力や教育力が向上します。産前産後からの切れ目のない 子育て支援にも貢献できますし、社会貢献をとおして 保育士の社会的地位の向上にもつながります。

――保育士の専門職性というと?

保育や教育の現場を支えているのは、それぞれの専門職としての自信と誇りです。よりよい保育や教育のために研鑽する熱意や努力は、クリエイティブな現場の日々の仕事や自己効力感に裏打ちされています。専門職として保護者や町の人たちからの感謝と敬意を受け、子どもの成長や、よりよい社会づくりに貢献する実感を得られることが、保育士自身の生命線になると思います。
 
(インタビューは次回に続きます)

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