インタビュー #5

あなたと議会をつなぐ。生活と政治をつなぐ。

私たちの力で政治を変える方法についての前回インタビューに続き、はじめて18歳になった大学生や高校生から、政治参加の方法や議員の役割についてインタビューを受けました

あなたと議会をつなぐ
――議会はなぜ身近に感じられないか?

★インタビュアー:大学1年生。好きなことは読書や宝塚観劇、好きな言葉は「一意専心」、政治についての知識はニュースで読む程度。

――そもそも、どうして議員になったんですか?
地域で一緒に火の用心をやっていた先輩議員に声をかけられたんです。議会なんて見たこともないのにと言ったら、「それがいいんだ。まっさらな目でぜんぶ見てほしい。感じたことをみんなに伝えてほしい」と頼まれて。
★議員を志した経緯と新人議員の葛藤については、インタビュー#1#4 をご覧ください

――そうだったんですね。迷わなかったんですか?
かなり迷いました。人並みに生きてきたつもりでしたが、区政や区議会を身近に感じたことなんて一度もなかったんですよ。生活にいちばん近い政治のはずなのに、よく考えるとおかしな話じゃないですか?それなら、自分みたいな人にどうやったら身近に感じてもらえるか、チャレンジしてみようと思ったんです。

――実際に飛び込んでみた議会は、どうでしたか?
はじめはほんとうに大変でした。なんでそうなってるのか、わからないことだらけなんです。今ごろやっと、先輩に言われたことの意味がわかってきたという感じですね。

――例えば、どういう風にですか?
議会の内部の常識や、暗黙の了解が多すぎるんですよね。何も知らない人のほうが、かえっておかしいことに気づけるし指摘もしやすいわけです。たとえば、決まった原稿を読み合わせるだけの会議とか、原稿に書いてないことは質問しちゃいけないルールとか、おかしいじゃないですか。ずっとそうだからとか、他もそうだからとか、そういうことじゃないと思うんですよね。

――どうして変わらないんですか?
自分たちで決めてるから、どうしても甘いルールになっちゃうんですよね。委員会のライブ中継が進まないのも同じ理由です。

――なんでライブ中継が必要なんですか?
区議会って見たことないですよね。ほとんどの人は何をやってるのかも、何が問題なのかも知らない。実際、平日の日中に区役所でやってる議会を見に来れる人のほうが少ないわけで、それだったらリアルタイムでオンライン中継すればいいと思うんです。ほかには、どうすれば区議会に興味を持ってもらえると思います?

――こうやって議員さんと話す機会があればいいんじゃないですか?親しみも持てるし、つながりを実感できるから
先日も高校生からインタビューを受けたんですが、学校の先生が区政や区議会のことを知らなくて、誰に聞いたらいいかわからなかったそうなんです。それこそ、議員の出番じゃないかと思うんですが。

――議員さんが授業で体験談を聞かせてくれたり相談相手になってくれたりしたらいいですよね
そうすれば、その人が議会でどんな活動をしてるかも気になりますよね。委員会で何を発言しているか、ちょっと見てみようかなとも思うかもしれません。オンラインで見られれば、もっと大勢の人が関心を持ってくれると思うんですよね。実際、23区でもあと6区だけなんですよ。委員会のライブ中継をやってないの。
★23区議会の議会ライブ中継や情報公開の状況については、レポート#23 をご覧ください

――私が提案しますよ。確か、議会への請願は誰でもできるんですよね?
はい。ただ、書面で出せるだけで、発言したり質問に答えたりはできないんです。
★請願者が委員会で意見陳述できる制度については、インタビュー#4 をご覧ください

――え、なんでですか?
文京区議会にはそもそも、請願者が議会で意見を述べる仕組みがないんですよ。

――それって、請願の意味がない気がしますが
もっと普通の人が普通に参加できる議会だといいですよね。そのほうが親しみも持てるし、議会への関心も深まると思います。

――そう。議員さんたちとフランクに意見交換できる会もあるといいですよね
いまは町会連合会との意見交換会だけなんですよね。しかも年1回だけです。ほかでは無作為抽出と公募でオープンに参加者を集めてる議会もありますからね。

――そのほうが誰にでも開かれた区議会って感じがします。選挙の討論会とかもあるといいですよね
選挙前に候補予定者の公開討論会をやって、オンラインで動画配信している区もありますね。ボートマッチといって、候補者の政策や公約が自分とどれだけマッチしてるかを調べられるところもあります。決めるのは住民である私たちですから、ニーズが高まれば、いろんなやり方が提案できると思いますよ。

――そもそも、若者の議員が少なすぎないですか?
文京区の人口構成と比べると、議会は高齢化していますよね。ほんとうは住民にあわせて議会も多様化すべきなんですが、実際はチャレンジしやすい人が限られちゃっているのが問題と思います。

――誰でもチャレンジできる議会にしたほうがいいと思いますよ。そうすれば、若い人にとっても他人事じゃなくなるんじゃないですか?
議員は区民全員の代表ですからね。年齢や性別で差別されず、誰もが持てる力を十分に出し切って活動できる議会をつくりたいと思います。

――そうですよ。ぜひ、私たちも身近に感じられる議会にしてください!

生活と政治をつなぐ
――なぜ私たちは政治に参加できないのか?

★インタビュアー:人との関わりが好きな高校3年生。5才から10年間、鹿児島のフリースクールに通う

――議員の仕事ってどんな感じ?
すごく楽しいよ。毎日が充実してるというか、やりたいことがあり過ぎて時間が足りないというか。人生をかけて仕事してる充実感があるよね。高校生活はどう?

――めっちゃ楽しいよ。いろんな人がいて、話してるだけで面白いし勉強になるよ。
僕もそう。いろんな人と話ができて、自分ってこんなに人と話すのが好きだったんだって再発見できたよ。

――保育士の仕事とは違う?
人のための仕事なのと、未来をつくる仕事なのは一緒かな。保育士と同じで、いろんな人と学び合ったり励まし合ったりできるのも、この仕事の好きなところだね。高校の友だちはどう?
★1 保育士と議員の仕事の共通点については、インタビュー#3 をご覧ください

――なかにはクズみたいなのもいるよ。自分のことばっかりで人のことなんか考えちゃいないのとか。承認欲求が満たされていないから、人に依存してばかりで自立もできないし
大人にだっているよね。私利私欲というか、自己中心というか。自分のためなら人が嫌がることも平気でできちゃう感覚なんだろうけど。

――だいたい、選挙っておかしくない?選挙カーとか、大声で名前ばっかり叫んでて迷惑だし。ポスターも顔と名前ばっかりで嫌な感じ。あんなの見ても選べないし。
名前なんて正直、大きな声で聞きたくないよね。候補者はできるだけ多くの人に顔と名前を知ってもらおうと必死なんだろうけど。

――でも、ふつう投票しなくない?名前を聞いただけじゃ。どんな人かとか、何を言ってるかのほうが大事なのに。
選ぶ人がどう選びたいかだよね。誰かに選ばせられたんじゃ面白くもないし。

――そう。人に頼まれたからとか、人に依存するのはもうやめてほしい。自立した大人なら当然、自分で選ぶものでしょ。もっと自分で選ぶ材料がほしい。
政策やプロフィールを配ってる人もいるよね。ホームページとかで発信してる人も。

――みんな紙ではいいことばかり書いてるじゃない?ほんとは直接、話したいんだけど。
まちかどで演説会や討論会をやったりする人もいるよ。

――会えばどんな人かよくわかるし、嘘もつけないからね。大人もそうやって選んでほしい。
ところで、未成年のときは選挙中も投票依頼ができないんだって知ってた?

――なにそれ?どういうこと?
未成年は「○○さんに投票してください」とか言っちゃダメだって、法律で決まってるんだよ。

――意味がわかんない。選挙権がないから?
まだ子どもだから、ちゃんと判断できないだろうってことらしいよ。

――甘く見られたもんだね。高校生もちゃんと考えてるんだって、大人に知ってほしい。
ほんとにね。一応、投票依頼じゃなければ大丈夫ってことなんだけど。

――候補者に取材やアンケートはできるってこと?
そうだね。こないだも別の高校生にインタビューを受けたよ。

――インタビューも?どうだった?
公約とかまちの未来のこととか、いろんな話が聞けてすごく勉強になったよ。区政や議会にもぜひ参加したいんだって。

――こんなことをやってほしいとか、気軽に提案できるといいんだけど。
高校生も提案したり投票したりして、みんなで決められるといいよね。

――住民投票だってできるんでしょ?
もちろんできるよ。ただ、そのためにはまず条例をつくらないと。

――どういうこと?
住民投票をやる前に条例を議会に提案して、可決されないとできないんだよ。

――大変そう。議会が否決したらできないってこと?
そう。ただ、予め常設の住民投票条例をつくっておけば、議会が否決しても投票し直せるよ。
★条例提案と住民投票を組み合わせた住民の直接請求による意思決定の仕組み(イニシアティブ制度)については、レポート#23 をご覧ください

――署名を集めたりも?
そう。署名が何人必要かとか、何歳から投票できるかとかも条例で決められるんだよ。

――なんかちょっと楽しみになってきたかも。
それそれ。政治ってほんとはワクワクするものだよね。自分たちで自分たちの未来をつくる感じ。

――こうやって政治を身近に感じるきっかけがあれば、私もやってみようと思うかもね。
地方自治を支えるのは自立した個人だっていうからね。そうやってきっかけをつくるのも、議員の大事な仕事のひとつなんじゃないかな。

――そうそう。これからもがんばってください!

▼過去のインタビューはこちらをご覧ください
#1 子どもたちが当たり前に政治を志せる社会をつくる
これまでの道のりや政治にかける思い、新しいスタートへの抱負など
#2 未来を生きる子どもたちに選ばれる議員になる
新しいスタートへの抱負や初めての議会活動、開かれた自由な議会への道すじなど
#3 誰もが政治の主役になれる社会をつくる
コロナ危機による変革のチャンスやボトムアップの政治参加の方法など
#4 透明で開かれた区議会から自治と民主主義を立て直す
学び合いとケアの政治への道すじや私たちの力で政治を変える方法など