――地域活動にも関わってきたそうですね。
十年前に地域の町会活動に初めて参加しました。最初は火の用心の夜警当番だけでしたが、お祭りや防災行事に子どもと一緒に参加してお手伝いするうちに、ご近所の方に誘われて町会の青年部に入ることになりました。
――入ったきっかけは何ですか?
東日本大震災です。家族だけで不安を感じていたところ、ご近所の方が温かく声をかけてくれたんです。「遠くの親戚より近くの他人」というとおり、何かあったときに一番に助け合えるのは、ご近所さんだと実感しました。
――青年部はどんなことをするんですか?
町会の役員とは別に、町の若手が中心となって、お祭りや子どもイベントなどを主催しています。町会というと高齢の方が多いイメージですが、青年部は世代が近いし、お互いの子ども同士がつながっていることもあります。
――子どものイベントも青年部がやるんですね。
はい。お祭りや防災など他の地域行事にも、できるだけ子どもが参加できるようにしています。いろんな世代が参加しやすい雰囲気になりますし、親も子どもを預けて楽しめるため、若い世代の参加率が上がります。町会が地域をつなぐ社会資本であるとすれば、青年部は、その機能を最適化する潤滑油という感じでしょうか。
――何か課題はありますか?
古い町なので、昔から住んでいた人と、新しく引越してきた人との間には意識の違いもあります。私が入った頃は、お神輿の担ぎ手も他の地域から手伝いに来てもらうケースが大半でしたが、子どもを通じて若い世代の担ぎ手が増え、次第にお祭りの雰囲気も変わってきました。
――お祭りの雰囲気ですか?
お祭りは、普段よく分からない町会の組織が目に見える貴重な機会です。お祭りを楽しそうにやっている町は、町会組織の運営もうまくいっているはずです。それでも人手不足の町会が大半ですから、手伝えば喜ばれます。
――初めてだと入りにくさを感じてしまいますが。
町会は自治組織なので、入口はもともと開いているはずです。あとはどうノックするかですが、お祭りや防災、子ども行事など、人手が足りなさそうなところは参加もしやすく、町の人にも感謝されて入りやすいはずです。
――煩わしく感じたことはありませんか?
他人とのコミュニケーションですから多少の煩わしさはありますが、要は落としどころと思います。町会は、地域のため、子どものためと目的が明確ですから、じっくりと話し合えば、どこかで折り合いをつけられます。見方を変えれば、自分を磨く機会にもなりますし。
――落としどころの有無の問題ということですか?
ネットのコミュニケーションでも、落としどころのない議論は断絶を生みがちです。地域では人と関わらないと何も始まらない。参加したくても、放っておいてほしくても、とにかく誰かと関わり続ける必要があるんです。
――町会も社会資本のひとつなんですね。
ええ。町会は戦時中、住民監視や思想統制に悪用されて衰退しましたが、本来は、住民の主体的な判断と行動で守られてきた自治組織なんです。うまく機能すれば地域をつなぎ、世代をつなぐ協働や公共性の拠点になるし、下手をすれば正反対の強制や人権侵害にも加担しかねません。要は、構成メンバー次第なんです。同じ過ちを繰り返さないためには、普段からいろんな人が意思決定に関わっていく必要があります。たとえ今うまくいっていなくても、少しのきっかけで変わる可能性があります。あなたが関わることで、未来が大きく変わることだってあるわけです。ぜひ一歩、踏み出してみてください。
★インタビューは次回に続きます
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