令和3年6月定例議会の本会議で、会派を代表して区長に質問しました。
私たち「文京みらい」は、「透明で開かれた、区民参加型の区政へ」「誰もが尊重され、幸せに暮らせる社会へ」「誰もが平等に、共に生きる未来へ」の三つの基本理念のもと、区民とともに知恵と力を合わせて、子どもたちに責任を持って引き継げる文京区の未来をつくるために集った会派です。
これらの理念の実現のためには、区民と区と議会の三者で協働し、議論を重ね、主体的に政策を提案する、二元代表の一翼としての議会の存在が不可欠です。
今回の一般質問では、3つの施策方針と7つの施策について区長に質問しましたが、どれも個人や会派の想いだけでなく、大勢の区民や議員のみなさんと一緒に、問題をオープンに議論し、よりよい文京区の未来への提案につなげることが目的です。
以下に質問と答弁をQ&A形式(※1)で整理し、答弁に対する意見や提案を添えました。今後も皆様と一緒に議論を深め、よりよい提案につなげてまいりたいと思いますので、ご意見やご感想をお寄せください。
また、当日の様子は文京区議会インターネット中継のサイトに動画で公開されます(※2)ので、あわせてご覧ください。※1 文京区議会の本会議一般質問は一括質問・答弁方式です。質問と答弁が30分ずつ連続するため、一問一答方式と比べて対応が分かりにくいのが課題です。
※2 本会議一般質問の生中継のほか、一般質問最終日から4日程度で録画中継を公開します(議員名や日程で検索できます)。現在は年4回の定例議会の本会議一般質問と区長の施政方針・所信表明だけで、委員会などは中継していません。
1 パンデミックや災害から区民の生命と財産を守る3つの施策方針
1.1 コロナ禍の危機管理とリスク分散
1.1.1 昨年9月の一般質問で、危機管理には最悪の事態を想定した想像力が必要と伺ったが、
普段は起きないようなさまざまな事態を想定して対策を立てるには、眼前の問題だけでなく、先を見据えた対応が必要。特に、平時の効率を優先した「選択と集中」戦略だけでなく、失敗や想定外の事態を含めた「リスク分散」戦略が求められるのでは?
区長:平常時から最悪の事態などさまざまな状況を想定するなど想像力を働かせることで、危機対応時の突発的事態にも柔軟な発想で的確に対応でき、リスク分散につながると認識している。
1.1.1 コロナ対策も未知のウイルスという突発的危機への緊急対応から、長期的危機への継続対応へとシフトしてきた。
最前線で対応する保健師や、それを支える職員体制を確保するためにも計画的な継続対応が必要では?
区長:職員の人事配置は事務量等を十分に精査したうえで適切な配置に努めている。コロナ対策で継続的な対応を要する場合も、内容や期間等を把握したうえで、保健師を含め、状況に応じた適切な人員配置を行っていく。
1.1.2 政府は感染症対策のため保健師を2022年までに1.5倍に増員し、コロナ禍の収束後もその体制を維持する方針を固めた。
新たな感染症の続発という最悪の事態を想定した方針であり、それが避けられた場合は一定の余裕が生じることを覚悟した方針。区の方針は?
区長:地域包括ケアシステムの構築でも、必要な保健師の人員確保に努めている。現在、保健所以外の部署の保健師5人が保健所業務を兼務しており、休日等の感染症患者の療養支援や濃厚接触者の対応等に従事し、感染状況に応じて柔軟に対応してきた。今後も国の方針等を踏まえ、感染状況に合わせた保健師の適切な配置に努める。
1.1.3 今後は感染症対策以外の政策分野にも長期的な影響が危惧される。
福祉や保育・教育、防災など、区民へのきめ細かな対応と信頼関係が必要とされる分野でも、長期的危機への対応のため、一定の余裕を持った職員体制の確保が必要では?
区長:継続的な対応を要する場合と同様に、内容や期間等を把握したうえで状況に応じた適切な人員配置を行う。
1.1.4 危機管理には、平常時の効率を優先した「選択と集中」戦略より、最悪の事態を想定した「リスク分散」戦略が有効。
特に、コロナ危機が突発的な危機から長期的な危機へと変化するなか、これに対応する職員体制も一時的な兼務や流用に頼るのではなく、予め一定の余裕を持った計画的で継続的な配置によって想定外の事態や施策の失敗に備える必要がある。特に、細やかな対応と信頼の蓄積が必要とされる対人業務の多い部署には優先して配置すべき【提案】
1.2 コロナ禍の地方分権と区民参加
1.2.1 昨年の質問で、区民の生命と財産を守るために、区民にとって最適な施策を区の自主的な判断で展開すべきと伺ったが、
地域主権改革が進み分権型社会の実現が求められるなか、国の施策が区民にとって最適でない場合は思い切った方向転換が必要。特に、未知のウイルスという未曾有の危機に遭遇したコロナ禍では、社会の空気や権力に隷従することなく区民の自由と連帯を守るため、一部の専門家や単一の部署ではなく多様な区民の声を集める仕組みが必要では?
1.2.2 昨年の学校一斉休校要請に加え、今回のコロナワクチンの接種についても、
国の押しつけが区の混乱を招く状況が続いている。国と自治体の関係は対等な協力関係のはずが、あたかも上下主従の関係に見える。地方主権改革の成果に逆行する国の考え方から区民の生活と地域社会を守るには、区民に情報を共有し、理解と信頼を得ることで、区民との協働・協治を進める必要があるのでは?
区長:自治体は住民の生命と財産を守る使命を有しており、区民にとって最適な施策を区の自主的な判断により展開すべきことは言うまでもない。今回のコロナ禍のような区民の生命と財産に危険や損害を及ぼす事態が生じたとき、区は、国や都の動向、専門家の意見等を踏まえ、より迅速に判断し、躊躇なく行動しなければならない。その過程では区民が求める情報を十分に提供し、さまざまな媒体で区民からの意見や苦情を集約し、改善すべきところは速やかに改善していく必要がある。
1.2.3 区民に情報を共有し、その声を集めて議論することで問題の所在と解決策を明らかにし、
区民に最適な施策を判断するのは議会の大切な役割のひとつ。区民が参加する審議会や区民会議と、議会の議論を相互にフィードバックし合うことで、双方の議論を活性化し、よりよい判断ができるのでは?
区長:区が開催する審議会や協議会は、区の施策や事業について区民委員等から意見をいただくことで課題の把握や評価を行い、今後の方向性を判断することが主な目的。その結果を議会に報告し、議論を深め、相互理解を促進することで区民に最適な施策になる。
1.2.4 国政と異なり、区民自身が政治に参加し、地方自治の担い手であることを自覚することで、
区や議会との協働を促し、地方自治の理念も具体化できる。区民が政治を身近に感じることで、地域の政治文化の成熟にも貢献できるのでは?
区長:政策立案、実施、評価への区民等の参画や区民等との協働による施策を推進することで、区政をより身近に感じていただけるものと考える。今後とも情報を積極的に公開し、協働を推進することで区民から信頼を得られる施策を展開していく。なお、区民と議会との協働については、議会自ら行われるべきものと認識している。
1.2.5 区民と区と議会の三者のうち、どれが欠けても本来の地方自治の政策サイクルは作動しない。
特に、コロナ危機でさまざまな政治課題が前景化し、区民の区政への期待や参加意識が高まっている今は地域主権改革の好機でもある。まず、情報をオープンにすること。そして、こんなにいろんな問題があるんだと区民に説明すること。理想と現実の間にこれだけギャップがあるんだと区民に知らせ、一緒に解決しようと声をかけて信頼と参加を促すのが本来の区のあり方【提案】
1.3 コロナ禍の組織管理とパートナーシップ
1.3.1 昨年の質問で、職員の課題解決力や危機管理能力の向上と自律した改革志向の職員の育成が課題と伺ったが、
未曾有の危機に瀕しても思考停止せず、自ら悩み、考え、行動する自律した職員を育てるには、上位者におもねるのではなく積極的に意見や提案をする職員を励ます組織と異論や反論を許容する職場風土が必要。特に、問題や課題をオープンに議論することで、職員の主体的な参加を促す仕組みが必要では?
1.3.2 区民との信頼関係を築き、協働・協治の理念で区政運営を進めるためには、
組織を萎縮させて自律性を失わせる強権的なリーダーシップではなく、自己研鑽と真摯な行動によって自律性を引き出すサーバント・リーダーシップが重要と伺った。反対に、イエスマンで固めた組織では前例主義と事大主義が蔓延り、隠蔽や責任逃れが横行して未曾有の危機には対応できない。危機に瀕しても思考停止しない組織をつくるには、多様な考え方の人がそれぞれの立場から施策を提案し、それをすり合わせることが必要では?
区長:職員育成基本方針に基づき、各所属で自立した改革志向の職員育成に努め、ファシリテーターとして多様な意見や提案を合意形成に導くことができる職員育成に努めている。今後とも、区が目指す改革志向の職員育成に努め、区民に信頼され、厳しい状況にあっても的確に課題解決が図れる組織を構築していく。
1.3.3 自律した改革志向の職員の育成には公正で透明な人事評価制度が必要。
特に、終身雇用が前提の公務員では、短期的な成果だけでなく長期的な視点で業績を評価する必要がある。この際、上司だけではなく同僚や部下を加えた多面評価も活用できる。処遇に反映しなくても定期的に自身を省みる機会になり、恣意的な評価が避けられるためパワハラ対策にも有効では?
区長:業績評価とプロセス評価を合わせた人事評価を実施しており、プロセス評価で業務への積極的な取り組み姿勢を適正に評価することで、職員の改革意識の醸成を図っている。短期的な成果のみならず、長期的な視点に立った取り組み等も評価の対象としている。多面評価はマネジメン卜能力の向上につながるメリットがある一方、評価の主体となる同僚や部下に心理的負担が生じる等の課題もあり、総合的に検討する必要がある。
1.3.4 危機に強い職員は、施策の検討や決定に主体的に参加し、たとえその施策がうまくいかなくても
隠蔽や責任逃れをせず、改善に最善を尽くすことができる職員。また、危機に強い組織は、想定外の事態に直面しても思考停止せず、一人ひとりが主体的に動ける組織であり、失敗しても他人事や人のせいにせず、問題をオープンにしてチームで解決にあたれる組織。このような職員や組織を育てるには、公正で透明な人事評価の仕組みと適材適所の人員配置に加えて、これらを後押しし一人ひとりのメンバーの力と充実感を引き出すサーバント・リーダーシップが必要。また、このような考え方は区民や議会との関係においても同様。どちらが正しいか、上か下かを比べる非対称な関係ではなく、問題を共有し、役割分担して一緒に解決にあたる対等なパートナーシップが危機対応の基本【提案】
★「2 SDGsの基本理念である「誰ひとり取り残さない」社会を実現する7つの施策について」の質問・答弁は後日公開します。