令和2年9月定例議会 本会議 一般質問(Q&A)

令和2年9月定例議会の本会議で、会派を代表して区長と教育長に質問しました。以下、質問と答弁をQ&A形式(※)で掲載しましたので、ご覧ください。
また、当日の様子は文京区議会インターネット中継のサイトに動画で公開されていますので、あわせてご覧ください。

※文京区議会の本会議一般質問は一括質問・答弁方式です。質問と答弁がそれぞれ30分ずつ連続するため、質問と答弁の対応が分かりにくい課題があります。区民に開かれた議会の実現には、一問一答方式への変更が求められます。

目次

1  新型コロナウイルス・パンデミックから区民の生命と財産を守る施策方針について

区長は、2019年度版マニフェストにおいて、7つの政策的課題を掲げ、その第一点に「災害等から区民の生命と財産を守る」と挙げた。未曾有のパンデミックとなった今回の新型コロナウイルス感染症の長期流行から、どのように区民の生命と財産を守るのか?

1.1  危機対応におけるリーダーシップ

1.1.1   適切な危機管理には

最悪の事態を想定した備えが必要。反対に、「正常性バイアス」という言葉のとおり、多くの組織や個人は、平時の日常が当たり前になると、有事のリスクを想定できなくなる。率先して最悪の事態を想定し続けるのもリーダーの役割では?

区長:リスクマネジメントにおいては、平常時から最悪の事態が起きた場合を想定する必要がある。想像力を働かせることで、様々な事態に即した的確な危機対応が取れるものと考えている。

1.1.2   危機の際の情報開示には

スピードとともに、正確性や具体性が求められる。反対に、行政が情報開示に消極的と受け止められると、住民の不信と不安を広げ、混乱を助長する。情報開示には、リーダーの決断力が求められるが?

区長:危機管理情報については、区民を混乱させることがないよう、正確な情報を適切なタイミングで広く発信することが重要であると認識しており、こうした考えのもと新型コロナウイルス感染症に関する対応についても陣頭指揮を執っている。

1.1.3   7月の区立保育園での集団感染の際

差別を助長するという理由で施設名を公表しなかったが、実際は憶測でデマが広がったり施設名を特定しようとしたり、所管課にも問い合わせが殺到した。区の情報開示の具体性の不足により、区民の不信と不安が広がった結果では?

区長:感染が発生した施設名等の情報開示については、感染拡大防止と利用者等への差別等の防止の両面から判断する必要がある。本区では、保育園や学校など利用者が限定されている施設の場合には、罹患者及び濃厚接触者の範囲が特定できるため、自宅待機の必要がない方や関係者が生活に必要なサービスの利用を断られたり普段どおりの生活ができなくなるなど不当な扱いを受けることがないよう、利用者等の人権を尊重し、施設名や特定につながるような地域名は公表しないこととした。一方、図書館など不特定多数の方が利用する施設の場合には、感染拡大防止を重視し施設名を公表することとしている。本年7月に区立保育園で感染が発生した際には、区内認可保育所等の保護者に対し入院や自宅待機等が必要な方を全て特定し、適切な対応を求めている旨を伝えるとともに、感染状況や対応状況についてはホームページで広く周知している。

1.1.4   近隣小学校の児童が陽性と判明した際

濃厚接触者がいないという理由で小学校は休校しなかったが、翌日は100人以上の児童が欠席した。区の説明が陽性者と濃厚接触者のみで、集団感染の保育園の施設名も学校との関係も説明しなかったため、保護者に不信と不安が広がった結果では?

区長:区立小・中学校の保護者には、当該保育園園児の兄弟姉妹関係について全て把握し適切に対応している旨を伝えることで不安の払拭に努めている。区としては引き続き、感染拡大防止と人権等への配慮を両立させた上で区民の皆様へ丁寧に説明し、情報の開示についてご理解いただけるよう努めていく。

1.1.5   どちらのケースも区民に情報を開示しなかった理由は

検査陽性者への差別を助長しないため。目的が差別をなくすことであれば、助長しないのと同時に看過しないことが大切。デマや誹謗中傷を止め差別を助長しないよう、区民に正しいメッセージを発信し、協力して乗り越えようと呼びかけ続けるのもリーダーの役割では?

区長:いかなる状況であっても、不当な偏見や差別につながるような行為は決して許されるものではない。区では既にホームページを通じ、差別的な言動に同調せず公的機関が提供する確かな情報の確認を呼びかけ、冷静な行動への理解を求めている。また、新型コロナウイルス感染症に対する区民の不安を解消するため、高齢者や子育て世帯等、対象に応じたメッセージを発信してきたところ。今後も正確でわかりやすい情報発信を行っていくことで区民の不安感や不信感を払拭し、差別が助長されることのないよう努めていく。

1.1.6   ある地方自治体の首長は

「感染が発生した集団を責めることは、次に自らが感染した時に周囲から非難される不安の裏返しである」として、風評被害に遭う恐れから他者を排除し、結果的に風評被害に加担してしまう人の心理を分析し、コロナ禍は不安から周囲を過度に警戒し互いに牽制し傷つけ合う人間の心の問題であると指摘。根底にある不安を取り除くことが最善の解決策【要望】

1.2  分権型社会におけるリーダーシップ

1.2.1   地域主権改革が進むなか

地域本位の分権型社会の実現が求められている。新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う緊急事態宣言の発令や、これに伴う学校の臨時休業においても、地方自治体の役割と権限の大きさが、再確認された。国の対策が適切でないときに、地方自治体が独自の対策を講じるには、リーダーの自覚と覚悟が求められるが?

区長:自治体は住民の生命と財産を守る使命を有していることから、区民にとって最適な施策を区の自主的な判断により展開すべきであることは言うまでもない。このたびの新型コロナウイルス感染症対策においても、国や都の動向を踏まえながら医療機関の多い本区の特性を生かし、区内5か所の医療機関にPCR検査センターを設置し、適切な検査体制を整備したほか新型コロナウイルス感染症の影響を受けた店舗等を支援する区内店舗宅配支援事業や子ども宅食プロジェクトを通じた食料品等の臨時配送を実施するなど、区独自の施策をスピード感を持って実施してきた。

1.2.2   コロナ禍以前の政策課題にも

見直しが求められている。特に、国が牽引していたインバウンド依存の観光振興や交流人口の拡大による地域経済の活性化は、感染拡大防止のための移動制限のもとでは成立しない。国本位ではなく地域本位の政策立案が求められると考える。観光振興についてはオーバーツーリズムの問題も指摘されている。特に、区民が誇りを持てる町を目指すには、観光客の量よりも質を優先する必要がある。観光客の多寡を重視する国本位の考え方から観光客の体験の質を重視する地域本位の政策へと転換すべきでは?

区長:新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策により外国人観光客を始めとする都内への観光客が減少する状況にあるが、区内周遊により区の豊富な観光資源の魅力を再発見していただくためSNSを活用した観光キャンペーンを実施している。今後も観光資源の魅力を発信する取り組みを推進し、区の魅力を高め、誰もが観光に訪れたくなるまちを目指していく。

1.2.3   地域経済の活性化についても

トリクルダウンの失敗の問題が指摘されている。交流人口の増大により恩恵を受けるのは主に大企業や高所得層であり、地域の中小企業や商店、低所得層を支えるのは住民とその生活の質。弱者を切り捨てず、連帯と相互扶助に支えられた地域本位の経済へと転換すべきでは?

区長:これまでも区内中小企業の持続的な発展のため様々な経済支援策を展開してきた。このたびの新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う経済対策としては、文京区商店街連合会と連携し、テイクアウトや出前対応の店舗をホームページで紹介する区内店舗情報発信支援事業や飲食店の弁当や総菜の宅配を行う区内店舗宅配支援事業のほか、中小企業信用保証料補助事業などを実施し、区内中小企業の支援を迅速に行っている。その中でも区内店舗宅配支援事業では、店舗の事業継続につながっただけでなく区内商店を応援したい区民が自らボランティア配送スタッフとなることにより、商店街支援の機運醸成につながるなど、区民が区内店舗を支える取り組みとして商店支援と区民協働の両面から成果があったものと認識している。今後も実効性のある経済支援策により区内中小企業の経営基盤の強化と区内産業の活性化を図り、地域経済の発展に努めていく。

1.2.4   心理学者のエーリッヒ・フロムが

著書の『自由からの逃走』に記したとおり、私たちには未曾有の出来事に向き合ったとき、自由な判断の孤独や責任を背負えず社会の空気や権力への隷従を選んでしまう傾向がある。この不自由の犠牲になるのは弱者。空気や権力に隷従せず住民の自由と連帯を守るのは地方自治体のリーダーの役割【要望】

1.3  行政組織におけるリーダーシップ

1.3.1   行政組織である地方自治体の目的は

地域社会への貢献。組織の内部に目を向けるのではなく、外部の地域社会に出て住民と対話し、生活目線に立って住民の自発性や努力を引き出すのは、行政組織のリーダーの役割と考えるが?

区長:リーダーシップを発揮する手法は様々あるが、時代の変化に適応するため現状に満足せず自己研鑽に努めているとともに、職員の誰よりも地域に出てその声を聴き、施策に活かすのが責務と考え日々実践している。また、職員には公務員としての自覚のもと公正かつ誠実に仕事と向き合い、職務を遂行するよう指示するとともに、コミュニケーションを深めながら組織力の強化を図っている。

1.3.2   過度な主張で取り巻きをつくって

周囲の助言を遠ざけ、組織を萎縮させて自律性を失わせる強権的なリーダーシップではなく、自己研鑽と真摯な行動によって姿勢と能力を内外に示し、職員や住民の自律性を引き出す「サーバント・リーダーシップ」が求められるのでは?

区長:サーバント・リーダーシップについてはかねてより着目しており、かくありたいものだと考えている。今後も区民や事業者等との対話を通じて相互理解を深め、信頼関係を築きながら、協働・協治の理念のもと行政組織の長として区政運営を進め、将来にわたり持続可能で豊かな地域社会を構築していく。

1.3.3   本区の職員育成基本方針は

目指す職員像に「課題に気づき、解決に向けて、自ら考え、行動できる、改革思考の職員」を、また、目指す行動様式に「現場でさまざまな事態に直面し、悩むなかから考え抜き、そこから得た知恵や理屈や経験を、自治体経営の方法論へと昇華させつつ、試行錯誤を経ながら、より洗練された実践につなげる行動様式」を掲げている。コロナ禍に直面し、悩み、考え、自ら解決策を見出そうとする自律した職員の育成が課題では?

区長:新型コロナウイルス感染症が社会経済活動等に影響を及ぼしている中、これまで以上に職員には課題解決力や危機管理能力等の向上が求められている。そのため、職員育成基本方針に基づき、より一層自律した改革志向の職員の育成に努めていく。

1.3.4   地方行政組織を対象とした研究から

職員の職務意欲を損なう可能性がある主な二つの要素は、職務に関する非効率な規則や手続きと業績を反映しない人事制度であることが示されている。前例に捕らわれない改革思考の職員の提案を積極的に採用し、その業績を確実に評価に反映する公正で透明な人事制度の構築が求められると思うが?

区長:本区の人事評価制度においては、職員が職務を遂行するにあたり、業績及び発揮した能力を公正に把握することができるよう業績評価とプロセス評価を合わせて実施している。プロセス評価においては、業務への積極的な取組姿勢を適正に評価することで改革志向の職員育成を図っている。

1.3.5   「正直者が馬鹿を見る」という諺があるが

反対に、”Honesty pays in the long run.(長い目で見れば正直は引き合う)” という英語の諺もある。「短期的に見ると正直は引き合わない」ということでもある。職員を公正に評価するには、目先の成果に囚われない長期的な視点が必要では?

区長:評価にあたっては、短期的な成果のみならず長期的な視点に立った取り組み等も対象としている。

1.3.6   「朝三暮四」という故事成語もあるが

行政組織の使命は地域社会の未来の利益を守ること。自身の目先の利益に囚われず公共の福祉に貢献できる正直で公正な職員を力づけ、これを率先垂範することも行政組織のリーダーの大切な役割【要望】

 

2  新型コロナウイルス感染症との複合災害を想定した避難所運営と防災まちづくりについて

新型コロナウイルス感染症の流行の長期化に伴い、地震や風水害等の自然災害との複合災害を想定した、避難所運営のあり方の見直しが必要となった。想定されるさまざまな被害から、どのように区民の生命と財産を守るのか?

2.1  複合災害を想定した避難所の避難者収容計画

2.1.1   7月に策定した避難所運営ガイドライン「新型コロナウイルス感染症対策編」によると

避難所の体育館で世帯ごとに2m間隔を確保した場合、従来の約2.3倍のスペースが必要となり、収容可能人数が大幅に減少する。対策は?

区長:パーテーションを各避難所に配備することなどにより、避難所の収容可能人数の確保に努めていく。

2.1.2   震災時に避難所生活者が収容可能人数を超え

区有施設などの二次的な避難所の開設が必要となる可能性のある避難所の数は?同じく、避難所生活者が(同一学区内の二次的な避難所を含めた)全体の収容可能人数を超え、避難者があふれる可能性のある避難所の数は?また、ガイドラインによると、世帯ごとにパーテーションを活用すると収容可能人数の減少は10%まで下がる。それでも避難者があふれる可能性のある避難所は?

区長:避難者の受け入れにあたり、世帯ごとに2メートルの間隔を取った場合、全ての避難所で収容可能人数を超過し、パーテーションを活用した場合でも、21か所の避難所で超過する見込み。区有施設等の二次的な避難所を含めた場合は把握していないが、二次的な避難所の開設後も更に避難者を収容する必要がある場合には、協定を締結している大学等に避難所の開設を依頼する。

2.1.3   地域防災計画によると

避難所が不足する場合は都からの資機材の調達等により、公園等の野外に一時的に受け入れ施設を開設するとのこと。対象となる公園と開設の手続きは?

区長:避難所が不足し野外に受け入れ施設を開設する場合は、目白台運動公園への開設を想定しており、災害対策本部の決定により開設し都へ報告することとしている。

2.1.4   震災後の学校再開について

3月の予算審査特別委員会では、区内の指定避難所の大半を占める小・中学校で体育館や普通教室、特別教室など学校施設の大部分を避難者の収容に活用するとのこと。本区のBCPでは一か月以内に学校再開を定めているが、コロナ禍で避難生活と教育活動の共存は困難化している。学校再開の手続きや時期、避難者との共存の方法は?

区長:地域防災計画では、避難所の開設期間は災害発生の日から7日以内とし、期間を延長する際は都知事の承認を受けることとしている。避難所開設のため、長期間にわたり学校が使用できない場合には、教育委員会に連絡し他の公共施設等の確保を図ることで早急に授業の再開に努めるが、具体策については今後の検討課題。

2.1.5   複合災害で子どものストレス症状も

複雑化や深刻化が予想される。症状を緩和しPTSDなどを予防するための子どもの居場所づくりや心のケアの方法は?

教育長:複合災害を含め、災害が発生した場合には、学校再開後の限られた環境の中にあっても教育センターと各学校が連携し、子どもの心のケアを迅速に行うことでストレスを緩和し、深刻な症状にならないよう予防する。具体的には、教育センターの心理職と各学校のスクールカウンセラーが協力し、睡眠の乱れや気持ちが落ち着かないといった心や体の反応への対応方法について情報提供する。また、自由に話せる場や時間を設け、気持ちを表現してもらうことでPTSDの予防に努めていく。さらに、アンケート等により支援ニーズの高い子どもを把握しカウンセリングを行うとともに、必要と判断した場合は専門機関へとつないでいく。

2.1.6   直近の都市直下型地震である阪神淡路大震災では

多くの避難所で避難者があふれ、避難生活が長期化して学校の教育再開が遅れ、子どもが放置された。コロナ禍を機に避難者収容計画を抜本的に見直し、公共施設や大学、高校、民間事業所、野外スペース、テント村など、あらゆる手段で避難者のためのスペースを確保すべき【要望】

 

2.2  複合災害を想定した備蓄倉庫と備蓄物資の対応

2.2.1   避難所の備蓄物資の備蓄量の算出方法は?

震災で避難者があふれる可能性のある避難所では、二次避難所や一時的な野外施設などに避難した避難者にも配給できる量を備蓄しているか?

区長:非常食等については、都と連携して、二次的な避難所等を含む避難所生活者を対象に、発災後3日分を確保することとしており、そのうち、区では1日分を備蓄している。

2.2.2   備蓄物資の増大によりスペースが不足し

天井近くまで物資が棚に積み上がった状態の備蓄倉庫も。倉庫の増設や配置の見直しなど、備蓄スペースの確保の方策は?

区長:備蓄倉庫については、棚卸し作業を定期的に行い備蓄物資の適正な配備に努めている。各避難所の備蓄倉庫のスペースが不足する場合は近隣の拠点倉庫に備蓄しているが、新たな備蓄倉庫の増設等については今後の検討課題。

2.2.3   避難者収容計画の見直しとあわせて

備蓄計画の見直しが必要。首都直下型地震による各地域の想定避難者数を算定し、避難所からあふれた人を含め避難者全員分の備蓄物資を収容できる備蓄スペースを確保すべき【要望】

 

2.3  複合災害を想定した在宅避難者の支援

2.3.1   新型コロナウイルス感染症などの蔓延のリスクから

在宅避難や親戚・知人宅などへの避難を住民に呼びかけるとのこと。自宅は無事でも、孤独感や不安で避難所への避難を希望する住民への対応は?また、3月の予算審査特別委員会では、耐震基準を満たすマンションの住民は避難所の避難者に想定していないとのこと。余震の不安やライフラインの停止、家具の転倒などにより避難所避難を希望するマンション住民への対応は?

区長:自宅に被害がなければ原則として在宅避難をお願いしているが、自宅での孤独や余震等への不安のほかライフラインの停止等により避難所への避難を必要とする方には適切に対応する。また、家具転倒防止器具の設置に対する助成の拡充等により、在宅避難における不安等の解消を図っていく。

2.3.2   本区の地域防災計画では

在宅避難者など避難所の外の避難者にも避難行動要支援者の把握やニーズの収集、食糧や飲料水の提供、生活必需品の配給、被災者生活再建情報の提供、要望の収集などの総合的な支援を避難所で行うとのこと。在宅避難者の増加に伴い、避難所の支援体制の強化が課題では?

区長:自宅を含め避難所以外の場所へ避難する被災者については、避難所運営部が町会や民生委員、ボランティア等を通じて人数や生活環境等を把握し、災害対策本部への報告のもと生活必需品の配給等、避難所における支援につなげる。在宅避難者が増加した場合も状況に応じて避難所での支援体制を整え、適切な支援を行っていく。

2.3.3   コロナ禍を機に

在宅避難者を自助・共助に任せない新たな公助の仕組みの必要性が顕在化した。在宅避難者が希望に応じて避難所に避難したり物資や情報の提供を受けたりできる総合的な支援体制の構築と、これを中心的に担う地域の避難所運営協議会の体制強化を、区の責任で早急に進めるべき【要望】

 

2.4  在宅避難のための自宅の家具転倒対策

2.4.1   安心・安全に在宅避難できる環境を整備するため

家具の転倒防止器具の設置助成の拡充を検討されているとのこと。過去の助成件数や実績は?

区長:これまでは、マイルームセイフティ事業として避難行動要支援者名簿の登録者を含む世帯等を対象に家具転倒防止器具の設置費用を助成しており、平成30年度に38件、令和元年度に29件の助成を行った。新たに実施を予定している家具転倒防止器具設置助成事業では、対象を全世帯に拡大するとともに助成金額を増額する。

2.4.2   賃貸住宅では壁面への開孔や固定が困難で

家具転倒対策が進まないと聞くが、対策は?

区長:賃貸住宅では、壁面に固定しない器具を使用するなど状況に応じた対策を行っていく。

2.4.3   名古屋市では家具転倒防止サポート制度と

ボランティア制度を運用しており、消防署や地域の工務店、ボランティア団体などと連携して、器具の設置の支援や助言を実施しているとのことだが?

区長:利用者の声や他自治体の状況等を踏まえ研究していく。

2.4.4   コロナ禍で家具転倒対策の重要性が顕在化した

家具転倒対策は耐震改修等に比べて取り組みやすく、傷病者の増大による避難行動や震災復興の遅れ、電気器具の転倒や電気配線の断線による同時多発火災などの予防にもつながる。全国の先進自治体に学び、官民連携で早急に対策すべき(住宅用火災警報器や感震ブレーカーの設置とあわせて)【要望】

 

2.5  防災まちづくりと耐震改修助成

2.5.1   災害への危機管理は多様な災害を想定し

何が起きても対応できる仕組みづくりポイント。防災まちづくりでも、多様なリスクを想定してリスクを分散する必要は?

区長:建物の耐震化や不燃化、崖地や細街路の整備、ブロック塀の改修、空家の除却等に対する助成等により、様々なリスクに備え災害に強いまちづくりを進めている。

2.5.2   3月に東京都の防災都市づくり推進計画が改定され

新たな基本方針が策定された。耐震化や不燃化、延焼遮断帯の形成などに併せて、木造住宅の良さや路地の雰囲気など地域の特性を生かした魅力的な街並みの住宅市街地の創出を追加したもの。本区の考えは?

区長:都の防災都市づくり推進計画の基本方針で示された地域の特性を生かした安全かつ魅力的な街並みの住宅市街地への再生については、個別の地域で取り組むまちづくりにおいて、地域の特性等に応じて検討する課題の一つと認識している。

2.5.3   耐震改修助成事業について

6月の建設委員会では、1981年以前の木造住宅の耐震化率の伸び悩みについて議論した。旧耐震の木造住宅が多く残る地域は、細街路や狭小住宅が多く、住民も高齢化し建替え意欲や資力が低下しているほか、借地や借家の複雑な権利関係や建替えによるセットバックなどの障害が多いとのこと。木造住宅耐震化助成において、建築基準法上の道路に突出している建物を対象外とした理由は?また、そのような建物でも受けられる助成は?

区長:現在の住居に住み続けたい場合には耐震改修費用を助成し、老朽化や不燃化の観点から建替えを希望する場合には除却費用を支援するなど助成制度の充実を図ってきた。一方、道路の拡幅は災害時の避難や緊急車両の通行など災害対策の観点から重要であり、耐震改修は道路後退を確実に行った上で実施すべきと考えている。そのため、建築基準法上の道路に突出している木造住宅については、突出部分の除却を行うのであれば除却費用とともに耐震改修費用を助成している。また、生命を守る観点から耐震シェルター等助成についても助成対象としている。

2.5.4   墨田区では平成18年度から木造住宅の

耐震改修助成事業を実施しており、建築基準法上の道路に突出している建物も簡易改修や耐震シェルター設置、除却の助成対象としている。簡易改修による耐震化の実績は過去10年で278件あり、昨年度の10件のうち半数の5件は道路に突出している建物が対象。細街路に面した木造住宅の住民が自身の生命を守る選択肢を複数提示した墨田区の事業は、防災まちづくりにおけるリスクヘッジの好例で、短期と長期の課題を分けて対応することで木造住宅の耐震化率を向上した貴重な前例【要望】

 

2.6  複合災害を想定した防災職員住宅の拡充

2.6.1   3月の予算審査特別委員会で

震災時の二次避難所の開設におけるマンパワーの不足について議論した。避難所の増設や初動態勢の強化が必要になれば検討するとのことだが、コロナ禍の今こそ、複合災害を見据えた二次避難所の増設や避難所からあふれた避難者の一時受け入れのための初動態勢の強化が必要では?

区長:災害対策は全庁を挙げて取り組む必要があることから、防災職員住宅入居者に限らず全職員が災害対応に関する正しい知識のもと、地域防災計画に基づき適切に行動できるよう、防災研修や訓練を実施している。今後もこれらの取り組みを計画的に進め、二次的な避難所の開設にあたる初動態勢を含めた防災対応力の向上に努めていくとともに、防災職員住宅の適正な配置等について判断していく。

2.6.2   防災職員住宅は平成27年度以降

拡充されていない。世帯用住宅もあるが、子育て中の若い職員の大部分は子どもの就学にあわせて家賃の安い区外に転居する。地域に貢献し、地域をよく知る職員とその家族が区内に住み続けられないのは区民にも損失。区内に住み続けられるよう支援が必要では?

区長:防災職員住宅から転居する職員が区内に住み続けるかどうかは本人の自由意思によるものであり、その支援については他の職員への公平性の観点からも考えていない。

2.6.3   震災時の初動態勢の強化は

喫緊の課題。土砂災害警戒区域等や土砂災害時の避難所の追加指定、新型コロナウイルス感染症との複合災害を想定した避難所スペースの増大と在宅避難者の支援など、新たな課題への対応力の強化も必要。特に、防災職員住宅の職員は平時から地域住民と密接な信頼関係を築き、有事には住民と連携して最前線で対応にあたるほか、休日・夜間等の発災時には避難所の開設・運営という重要な職責を担う。職員の自区内居住率の低い本区での初動態勢の確保には増員が不可欠【要望】

 

3  エッセンシャル・ワーカーとしての保育士の処遇と保育の質について

新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う緊急事態宣言の発令によって、介護・保育・教育など、私たちの生活の維持に欠かせないエッセンシャル・ワーカーの処遇の問題が顕在化した。流行の長期化から区民の生命と財産を守るために欠かせない仕事である保育士の処遇と保育の質については?

3.1  園児の遊び場の確保と保育士の就労環境の改善

3.1.1   保育園は三密の場。園児も保育士も常に

感染のリスクと向き合いながら日々を過ごしている。園庭がない保育園では遊び場も限られ、室内の遊びも制限されている。区有施設や公共施設など、あらゆる手段を講じて遊び場を確保すべきでは?

区長:遊び場の確保にあたっては、区内運動場や都立庭園の利用等、様々な施設の活用を進めている。その他の地域資源についても、遊び場としての活用の可能性等について、引き続き、検討していく。

3.1.2   保育士の就労環境も悪化している

活動のスペースや内容も制限され、換気や消毒による負担も増えている。マスクの着用によって、乳幼児とのコミュニケーションが妨げられるという声も。ストレスと過労が長期化すれば、保育士の疲弊が進み人手不足を助長しかねない。継続的な支援が必要では?

区長:区立保育園の園長経験者等による私立認可保育所等への巡回指導を軸に、保育士等に対し継続的な支援を行っている。新型コロナウイルス感染症の影響により巡回指導の回数は限られているが、各保育施設に対し定期的な聞き取りを行い、職員間のコミュニケーションや感染症対策の確認、見守りが必要な家庭への関わり方等、様々な相談に対応している。

3.1.3   全国保育協議会と全国保育士会が5月に実施した

インターネットによる保育士アンケート調査によると、感染拡大によるストレス要因について、保育園で働く保育士の9割が「3密が避けられず、子どもや保育者に感染リスクがあること」と回答した。エッセンシャル・ワーカーとして最前線で働く保育士の生の声を聞くべき【要望】

3.2  保育の質の向上のための調査と評価の仕組み

3.2.1   保育士の従業員満足度調査の実施を

3月の予算審査特別委員会で提案した。保育士がどういう点にどの程度、満足あるいは不満を感じているかを分析する本調査は、職場環境や業務の負担感と改善策、保育士の離職理由など保育現場の課題と改善策を総合的に明らかにする手法。コロナ禍で増える保育士のストレスや負担感の原因を分析し、流行の長期化に備えるには今しかないのでは?また、保育のプロセスの質の評価についても提案した。現場で活動する保育士が、日々の保育のプロセスのどこに問題を感じているのか、この暗黙知を現場の保育士と担当の行政職員が共有し、協働で評価を行うオープンな参加型の評価の仕組み。コロナ禍で不安とストレスに苛まれる今だからこそ互いに歩み寄り、新たな関係性を構築するチャンスでは?

区長:私立認可保育所等の職場環境の改善については、第一義的には各事業者が園の事情に応じて対応するものと考えており、保育士へのアンケート調査等を実施する予定はないが、区としても、指導検査や巡回指導の際に、職場環境の確認や、現場の保育士が感じている問題点への助言を行うとともに、日頃から相談しやすい環境を構築することで、引き続き、保育の質の向上に努めていく。

3.2.2   指導検査と巡回指導の有効性の検証の必要性について

3月の予算審査特別委員会で議論した。コロナ禍による保育現場の混乱が続くなか、一時的で一方的な検査や指導のみで保育の質を評価、改善できるかは疑問。エッセンシャル・ワーカーとしての保育士への社会的評価が変わるなか、保育の質に直結する保育士の処遇や職場環境の評価と改善の仕組みづくりは喫緊の課題。特に、私立認可保育所の運営内容に対する指導監督の責任は区にあり、保育の質の確保の責任も同様。保育の質の向上には保育士の職場環境の改善が不可欠であり、そのためには現場の保育士の生の声が必要。保育園は本区の重要な社会インフラであり、コロナ禍の非常事態宣言下でも区民の生命と財産を守るために最前線で働き続けた保育士を支えるのは行政の責任。混迷するコロナ禍の社会を支え、奮闘する子育て家庭を支え、増え続ける保育ニーズを支え、人口と税収の持続的な増加を支え、文京区の未来を支える保育士の声を聞き、社会に届けるのは私たちの責務。再考を要望する【要望】

 

3.3  幼保一元化施設のこども園化

3.3.1   現行の幼保一元化施設では、区立保育園保育士と

区立幼稚園教諭が混在している。教職員間で処遇や勤務時間に差があり、組織のチームワークにも影響する。こども園化に伴う課題も多いなか、区採用の保育教諭で一本化すべきでは?

教育長:現在、関係部署と協議を進めているところ。その中で、職員体制を含め、運営方針について検討していく。

3.3.2   保育士と幼稚園教諭の処遇や職場環境の格差に

つながらない職員体制づくりが課題。文京区版幼児教育・保育カリキュラムについても、本来の目的は公立・私立、幼稚園・保育園・こども園の枠を超え、すべての施設が共通の考えに立った保育・幼児教育を実現することであり、子育て支援のさらなる充実や小学校教育との円滑な接続のためにも、こども園化を契機に保育・幼児教育の質と保育士・幼稚園教諭の処遇を発展的に統合すべき【要望】

4  地域包括ケアシステムと住み慣れた地域で暮らし続けられるまちづくりについて

4.1  コロナ禍での在宅医療と介護の一体的なシステム構築

4.1.1   区長は2019年度版マニフェストにおいて

「健康で安心な生活基盤の整備」を政策的課題に挙げ、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援を一体的に提供する、文京区版地域包括ケアシステム の構築を表明した。コロナ禍において地域や家族の支援力が低下し、孤立した高齢者の認知症や要介護者が増大するなか、高齢者あんしん相談センターでも相談員 などの受け持ちケース数が増え、支援の長期化や困難化による負担も増えている。流行の長期化を見据え、地域の医療・介護の関係機関が連携し、多職種協働で在宅医療と介護を一体的に提供できるシステムの早急な構築が求められるが?

区長:誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中にあっても、区の公的なサービスに加え、「人と人とのかかわり」を軸とした地域での助け合い・支え合いの取り組みを進めることが重要。区では、これまでも、医療と介護を必要とする高齢者のため、高齢者あんしん相談センターや地区医師会による在宅療養支援を進めてきた。今後、医療・介護関係者間の、ICTを活用した速やかな情報共有を促進するとともに、医師や看護師に加え、ケアマネジャーやヘルパー等の多職種が参加する研修会の充実を図り、顔の見える関係づくりを進めていく。

4.1.2   高齢者の外出機会の減少により

身体機能や認知機能が低下しているうえ、通院控えにより発見・対応が遅れ、関連の相談対応や支援が困難化・複雑化するケースが増えている。医療・介護の地域連携のハブとなる高齢者あんしん相談センター(地域包括ケアセンター)のニーズや役割の増大を見据えたシステム構築が課題【要望】

 

4.2  コロナ禍での高齢者の見守りと熱中症対策

4.2.1   都内の熱中症による死者が急増した

うち約8割は70歳以上の高齢者で、その多くがエアコンを設置していなかったか、使用していなかったとのこと。荒川区は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした「あら!快適 ステイホーム・エアコン助成事業」を開始し、三密を避けて自宅で快適に過ごすための、エアコン購入費用の一部を助成しているが?また、エアコンの故障による不慮の事故も増加した。区内には、高齢者あんしん相談センターや関係部署と連携して高齢者の生活を地域で支え合うハートフルネットワークがあり、区内の電器店も複数協力いただいているが、このような状況をいち早く発見することができる体制づくりが必要では?

区長:区では、民生・児童委員による要支援者等の在宅状況の確認に加え、本年7月からは新たに高齢者見守り相談窓口事業を開始し、高齢者あんしん相談センターの職員が戸別訪問により高齢者の生活実態を把握することで、早期の支援につなげられるよう取り組んでいる。熱中症対策として、区独自で、高齢者に対するエアコン購入費用の助成を行う考えはないが、戸別訪問時に、高齢者の健康状態や室内の状況等を確認するとともに、区報やホームページによる周知、チラシの配布等により、熱中症予防の啓発活動に取り組んでいる。今後も、高齢者が地域で安心して暮らし続けられるよう、民生・児童委員やハートフルネットワーク協力機関等と連携し、高齢者の生活を地域で見守る取り組みを推進していく。

4.2.2   コロナ禍は孤立した要支援・要介護の高齢者や

これを支える家族や地域を直撃した。災害と同じくパンデミックに日頃から備え、関連死を含む危機から区民の生命を守るのは区の第一義的な責任。防災における自助・共助・公助と同じく、自助や共助を前提とする強者のシステムは弱者の生命を軽視する。すべての区民の生命を守るには公助を前提とする弱者のためのシステムが不可欠。民生・児童委員やハートフルネットワークなど共助の仕組みを支える公助の体制づくりが喫緊の課題【要望】

 

5  新型コロナ検査体制の拡充と往診・訪問診療による検査について

5.1  「誰でも、いつでも、何度でも」検査できる「世田谷モデル」

5.1.1   感染者の増加を受けて世田谷区では既に

介護・保育・教育など、人との接触回避が困難なエッセンシャル・ワーカーには、先回りして定期検査を表明している。区民の不信と不安を解消し、差別や誹謗中傷を止めるには、検査数を増やし、無症状者を含めた多くの感染者を発見し、正確で具体的な情報を開示するしかないのでは?

区長:区では、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われ、検査が必要であると医師が判断した方や濃厚接触者に対し、適切なPCR検査の実施体制を整備してきた。一方、感染症の収束が見通せず市中感染が拡大する中、身近で感染が発生したにも関わらずPCR検査の対象にならなかった方については、大きな不安を感じているものと認識している。これを踏まえ、感染が発生した介護施設や保育園、学校等の利用者や職員等に対し、個々のケースに応じたPCR検査の実施を検討している。また、感染した際に周囲に与える影響が大きい、福祉施設等の職員に対するPCR検査については、今後、国や都の動向を注視しつつ、施設の状況に応じた検査体制等を検討していく。なお、情報の開示については引き続き、感染拡大防止と人権等への配慮を両立させた上で、区民に丁寧に説明し、ご理解いただけるよう努めていく。

5.1.2   「世田谷モデル」については

軽症者や無症状者も感染源になっている新型コロナウイルスの特性と、有症者や濃厚接触者だけを対象者とする従来の検査体制のミスマッチを解消するためと世田谷区長が言明している。コロナ禍の不信と不安の原因の一端は、このミスマッチによって軽症者や無症状者による市中感染が拡大したことにあり、こうした根本の原因を解決することが最善策【要望】

 

5.2  往診や訪問診療による検査体制の整備

5.2.1   新型コロナウイルス感染症の致死率は

70歳以上の高齢者において優位に高いと判明している。発熱しても外出が困難のうえ、感染リスクを恐れて医療機関や検査施設に行けない高齢者には往診や訪問診療による検査が有効。検査数の拡充のためにも地域の医療機関での往診や訪問診療による検査体制の整備が必要では?

区長:外出が困難で医師が新型コロナウイルスの感染の疑いがあると判断した患者については、必要に応じ訪問診療を行っている医療機関と連携し検査を実施している。

5.2.2   季節性インフルエンザの流行期に入ると

発熱患者が増え、検査所や地域医療機関での対応は一層、困難になる。単身高齢世帯が増え、往診や訪問診療を担う地域医療機関への期待や役割が増えるなか、検査所に行けない在宅患者や集団感染が置きた施設の入所者への対応など、全国的な体制整備が必要【要望】

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